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性分化疾患のある女の子のお母さんの体験談(インターセックス)

DSDのあるふたりの娘さんを育てたお母さんから

アンドロゲン不応症(AIS)女性の娘さんの母

アーリーンさん

家族がオープンな雰囲気を持ってお子さんのことを受け止めていけば、お子さんのこれからの人生はしっかりとしたものになっていきます。お子さんも成長すれば、自分は受け入れられているんだ、DSDを持っていることなんてそれほどたいしたことじゃないんだ、それはそれで良いと、いつしか分かってくれるでしょう。

 

 男の子ですか?女の子ですか?もし皆さんの赤ちゃんが見た目が少し違う外性器の状態で生まれたら、お医者さんはすぐには答えられないでしょう。そのような状態は、現在では「hermaphrodite(ハーマフロダイト:両性具有・男でも女でもない性)」という言葉は使われておらず、「DSDs:体の性の様々な発達(性分化疾患)」と言われています。DSDsを持つ子どもたちは、他の人とは少し違ったX・Y染色体の構成や、他の人とは少し違った性腺(卵巣や精巣)、あるいは見た目が少し異なる外性器の状態という場合もあり、全人口の約0.5%の人がなんらかのDSDsを持っていると言われています。

 アーリーンさんは、医師であり、DSDsのある人々の支援者であり、そして
アンドロゲン不応症(XY染色体ですが,性腺からのテストステロンホルモンに体の細胞が反応しないため、まったくの女の子に生まれ育つ状態)を持って生まれ育った二人の娘さんの母親でもあります。AIS女性の親御さんのためのサポートグループとの共同活動として、アーリーンさんは娘さんと一緒にオプラショー(訳者注:アメリカで有名なトークショー)に出演され、娘さんはDSDの体の状態で育つこと、自分の体の状態のことも話されました。

 彼女はまた、当事者支援団体
の理事会に対して、家族として医師としてアドバイスをする立場でもあります。アーリーンさんには、DSDを持つ二人の子どもを育てる上での、男の子か女の子かがはっきりしていく過程や、子どもが自分自身のからだを受け入れていくにはどうすればいいかなど、さまざまなことをお話していただきました。 

 

――インタビュアー ミーガン・プレイチャ

御覧の皆様へ

 DSDを持つ子どもの親御さんたちには大きな責務が課せられることになります。自分のお子さんに、DSDについて話をするかどうか、話をするにしてもどのように話していくのかを決めていかねばなりません。それは時に命がけの決断にもなり得ます。

 お子さんにお子さんのDSDsについていつ・どこまで話をしていくかは、それぞれの国・地域の文化、お子さんの成長によって異なってきます。日本と欧米では子どもの成長度は異なりますので、話すか話さないか、いつ話すか、どこまで話すかはまた異なってきます。この体験談の年齢・話し方だけが正解とは限りません。私たちはそれぞれのご家族の様々な判断を尊重したいと思います。どのような決断にしても、それぞれご家族の大きな想いが込められていると思うからです。(ただし、非常に残念なことですが、親御さんの元々の罪悪感、受け止められなさ、話すということの重責感から、お子さんが親御さんから何のサポートも得られないというケースもあります。私たちはお子さんの幼少期からのご家族への心理的医療サポートが必要であると考えています)。
  
 様々な方が、このサイトをご覧頂いていると思います。DSDを持って生まれたお子さんのご両親、現に大人になった方、医療に関わる皆さん、何らかの支援ができないかとお考えの皆さん、様々なお立場の方がいらっしゃると思います。それぞれに様々な思いを抱かれることかもしれません。

 

 時に、DSDを持つ子どもの親御さんたちは、ただでさえ様々な思いを抱かれているところを、「勝手に性別を決めている」「本当は中性なのに」などという無理解から、不当な非難に曝され、更に追い詰められていくということがありました。確認しておきたいのですが、DSDを持つ子どもたちは、然るべき検査を受ければ女の子か男の子かが判明するようになっています。彼ら彼女らは、みなと変わらぬただの女性・男性です。トランスジェンダーのみなさんの性自認(性別同一性)の話でさえないのです。またDSDを持つ人々の様々なサポートグループでも、「然るべき検査の上で必ず男性か女性かを判定してください」と主張されています。DSDをジェンダーの問題だけで見ようとする視点は、大変偏った視点(偏見)で、多くのご家族を更に苦しい立場に立たせることになります。

 

 私たちが大事だと思うのは、とにかく、ご家族・ご本人そのままの想いを、そのままに、ありのままに、受け止めていくことだと思っています。どうか、無理解や偏見・色眼鏡から、人としての想いを忘れることがないようお願いしたいと思います。

 

 私たちは「性のグラデーション」でも「男女の境界の無さ」でもありません。むしろそのようなご意見は、私たちの女性・男性としての尊厳を深く傷つけるものです。

 アンドロゲン不応症をはじめとするDSDs:体の性の様々な発達(性分化疾患)は、「女性にもいろいろな体がある、男性にもいろいろな体がある」ということです。

 

 どうか、お間違いのないようにお願い致します。

 

 詳しくは「DSDsとは何ですか?」のページをご覧ください。

娘たちは健康で完全な女性ですとおっしゃっていただきました。

――娘さんがお生まれになったときには、DSDのことはどれくらいご存知だったんですか?

 医学生のときに、いわゆる「インターセックスの状態」についての講義は受けていましたし、
AIS(アンドロゲン不応症)について学んだことも覚えています。ですが、娘たちが生まれた時は、この子たちのAISについては分かりませんでした。分かったのは、姉の方が6歳でヘルニアの手術を受けたときです。幸運なことだったのですが、その時の小児外科の先生がすばらしい人で、ヘルニアの中に精巣があるかどうかをちゃんと調べて見つけられたんです。鼠径部のヘルニアを持つ女の子の約1%は、AISを原因とするものです。そしてその要因は家族にも流れていますので、妹も検査を受けるようおっしゃったんです。姉妹ともAISだと分かったのは、妹が4歳、姉が6歳のときです。



――お医者さんの反応はどうでした?アドバイスはありましたか?

 ええ。担当の専門医は実際すばらしい人でした。医大の小児内分泌学の専門の先生で、とてもサポーティブで支えになってくれました。
娘たちは健康で完全な女性ですとおっしゃっていただきました。ただ、娘たちが大人になったときにはどういうことが起きるのか、それについてはあまりご存知ではありませんでしたので、私は娘たちの将来のことがずっと心配で、同じような状況を体験してきた人に会ってみたいと思っていたんですが、紹介はしてもらえませんでした。それはとても孤独でつらい状況でした。

 

 

――アーリーンさんが体験されたことは、お子さんが診断を受けた他の親御さんにも言えることだとお考えですか?

 はい。私はAIS/DSD親のためのサポートグループという150家族が参加するグループのメンバーですが、ご両親の大多数が、このグループに参加するまで、同じ状況にある他の人と会うことも話すこともありませんでした。

ビューを楽しむ
Image by Daiga Ellaby

娘たちには肯定的に受け止めてもらいたかったんです。

――娘さんお二人にDSDのことをお話されたのはいつですか?診断されてからすぐに?どんなふうに話されたのですか?

 ふたりにはすぐに話をはじめました。娘たちには肯定的に受け止めてもらいたかったんです。里親になることを選択すれば、家族を持てるという期待も持ってもらいたいと思いましたので、さまざまな形の家族のいいところを中心に、自分自身を良しと思えるようがんばってきました。



――小さなお子さんに自分のからだのことをどんなふうに説明していかれたのでしょうか?

 まだ歩き始めの小さな子どもはたくさんの質問をしてくるものですが、違いというものも受け入れていきます。もし子どもが「私の大事なところって、他の人となんで違うの?」と聞いてきたら、「うん、中にはね、他の人と見た目が違う大事なところを持っている人もいるのよ」と言ってあげれば、子どもたちはそれを受け入れます。ただまだこの時期の子どもはとても具体的なことしか考えられませんので、この時点では細々した説明は必要ありません。

 

 自分の性器などのことを変だと思っても、子どもはそれを受け止めていけます。最初からくどくど話すのではなく、必要に応じて少しずつ話していくのが大切です。そうすれば、子どもたちは幼稚園に入るまでには、自分の自己アイデンティティを成長させていけます。それとこの年代では、自分で自分は女の子だと自覚も持ち始めます。それに両親を自分のロールモデル(訳者注:生きていく上でのお手本)にしていくことでしょう。

 

 子どもたちへの話は、ちゃんと事実に即したことを話すことが大切です。そして「こういう人もいれば、ああいう人もいる。みんないろいろなの。さ、夕ごはん食べよ」と言ってあげてください。

 

 

――DSDを持つ子どものご両親に一番大事なアドバイスはどんなことだと思いますか?ご両親が守るべき一番大事なことは?

 ただただ、子どもを愛してあげてください。それとオープンに話せるようにしていってください。もし家族がオープンな雰囲気を持っていてお子さんのことを受け止めていけば、お子さんのこれからの人生はしっかりとしたものになっていきます。お子さんも成長すれば、自分は受け入れられているんだ、DSDを持っていることなんてそれほどたいしたことじゃないんだ、それはそれで良いと、いつか分かってくれるでしょう。

 

 もうひとつ。お子さんの支え役になってあげてください。どうすればいいのか親の直観を生かしてください。お医者さんは必ずしもこの分野の経験をたくさん持っているとは限りませんし、ご両親のほうが医療従事者よりも大事なことを知っていることなんて沢山あるのですから。
 

実際は、DSDsのことと、性自認や性的指向とは関係がありません。

――DSDsは性的マイノリティのみなさんの「性自認」や「性的指向」と関係があるのですか?

 

(訳者注:「性自認」とは自分のことを「男性である」「女性である」と認識すること、「性的指向」は男性を好きになるか女性を好きになるか両方を好きになるかということを指します。ここでは、性同一性障害の方のように育ちの性別と異なる性自認を持つようになることや、同性愛・両性愛の方との違いを意味しています。)


 みなさんそこに注目したがりますし、ご両親にとっても大きな関心事にもなりますね。けれども実際は、DSDsと、性自認や性的指向とは関係がありません。医学的・身体的なこととは関係なく、自分のことを男でも女でもないと感じる人はいますが、ほとんどいらっしゃいません。現在では、DSDsを持った赤ちゃんや子どもはみな、男の子か女の子かちゃんと調べて、性別判定されています。大多数のケースで、よく考えられた性別判定なら正しいものになります。もちろん性別変更するお子さんもいらっしゃいますが、極めて少数です。
 

――性別判定はどのように行われるのですか?

 ちゃんと考慮せねばならないのは、外性器の外観と、子どもが持っている性腺は何か、その性腺はどの種類のホルモンを生成するかということです。
AISの女の子は、染色体がXYで精巣を持っていても、女の子です。他の何者でもありません。

 

 胎児の脳が男性ホルモンに暴露されると、ある種の脳の男性化がありうることはご存知だと思います。(訳者注:現在では、胎児期のアンドロゲン暴露は男の子のような活動性を促すことはあっても、性自認にはほとんど影響しないことが分かっています。)そのことをお聞きになりたいんですよね。男の子を女の子にすることはできません。でもつい最近まで、そういう間違いが繰り返されていたんです。染色体がXYで、小さなペニスと精巣を持つ男の子を医者が見て、「このペニスでは、小さすぎてちゃんとしたインターコースができない。だからこの子は男の子じゃない」と言って、外科手術で膣を作って精巣を切除して女性ホルモンを投与する。もちろんその子どもたちは必ずしも自分を女の子だと思うとは限りません。ですので、この劇薬みたいな「治療」を施した後、子どもには何をしたか絶対言わないように両親は言われていたんです。そうして、大きくなって、何か絶対おかしい、自分の身体なのに自分の身体じゃない感じがする子どもたちがたくさん出てくることになっていたのです。


――その当時、ペニスの長さを測るのに”ペニス定規”を使って、ある長さ以上なら男の子、ある長さ以下なら女の子ということにされていたんですね。

 そうです。本当にあったことです。
 

植え替え
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DSDsを持つ子どもたちも皆と同じ素晴らしい子どもなんだ。

――DSDsについて人々が論じる時によくある間違いにはどのようなものがありますか?

 そういう人たちは、性分化疾患を持った子どもたちは
トランスセクシャル(性同一性障害)やトランスジェンダーだと思ってらっしゃるでしょうね…(トランスジェンダーやトランスセクシャルの人たちが、誤った性別で育った人のことです)。

 

 全然そうじゃない場合がほとんどなのに、みなさん、DSDsのことをジェンダー・性別の問題にしたがるのです。そのような状況自体が、実は私たちが問題としていることです。ただいろいろな男性がいる、いろいろな女性がいるというだけの問題に過ぎないのですが。



――なるほど。オプラショーはいかがでしたか?

 ああ!彼女はとても素晴らしかったです。とても親切な方でした。オプラは私たちの文化の最高の女性祭司のような存在でしょうね。オプラがOKと言えば、みんなOKになるんですから。「見てください。私たちはこの人たちについて考え、受け入れていかなきゃいけません」と彼女が言えば、たくさんの人たちが目を開くんです。私達のグループに参加されているDSDsを持つ子どもの親御さんたちは、いつもお子さんのプライバシーを心配され、子どもを守りたいと思ってらっしゃいます。

 

 今回の番組はアメリカ中の何百万人という人が見ました。TVを見る人たちには、DSDsを持つ青年たちを本当に理解し、DSDsを持つ子どもたちも皆と同じ素晴らしい子どもなんだと理解してもらえ、親御さんたちも重荷から解放されたとおっしゃっていただけました。
 

アンドロゲン不応症(AIS)女性とは?

 アンドロゲン不応症(AIS)女性とは、女性のDSDs:体の性の様々な発達(性分化疾患)のひとつです。AISでは、染色体はXYで性腺も精巣なのですが、男性に多いアンドロゲンホルモンに体の細胞が全く,あるいは一部しか反応しない状態のために、母親の胎内の段階から、まったくの女性に生まれてきます。

 

 ただ、アンドロゲンレセプターが一部しかない部分型アンドロゲン不応症(PAIS)の場合、生まれた時、女性外性器がすこし大きめの状態で生まれることもあり、 現在ではちゃんとした検査が行われた上で、パターン・ケースが把握され、女の子であることが判明するようになっています。

 

 またアンドロゲンレセプターが完全にない体の状態は、完全型アンドロゲン不応症(CAIS)と呼ばれていて、この場合は生まれたときには全くわからず、たいていの場合思春期前後に判明します。

 ですが、完全型・部分型女性両者とも、子宮や膣の一部がなく、生物学的な子どもを持つことができず、ご本人もご家族も大きなショックを受けられることがほとんどです。

 アンドロゲン不応症(AIS)など染色体の違いのある女性についてさらに詳しくは、こちらをご覧ください。

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