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ベルギー国家機関調査報告書解説




ベルギーフランドル:インターセックス/性分化疾患調査報告書
ベルギーフランドル調査報告書表紙

 連日LGBTQ等性的マイノリティーの皆さんについての報道がなされ,各地で人権セミナーなどが行われており,時折DSDsを持つ人々が「身体の性の多様性」や「男女以外の存在」であるように言及されることがあります。


 ですが,実際のDSDs(体の性の様々な発達:性分化疾患/インターセックスの体の状態)とはどのようなものなのか? DSDsを持つ人々やご家族の皆さんは,現実にはどのような身体的・社会的困難を持っているのか? 実はそれはほとんど知られないまま,当事者のみなさんの人間として最も私的で最もセンシティブな身体の領域の話が,イメージだけが先行して語られています。


 でも,それは果たしてDSDs当事者家族のためになっているのか? それを問う人はほとんどいません。


 世界で初めて同性婚を実現させた人権先進国オランダでのDSDsを持つ人々の実態調査に引き続き,世界で2番めに同性婚を実現させたやはり人権先進国のベルギー,そのオランダ語圏のフランドルの国家機関が,イメージでも記号でもない現実のDSDs(性分化疾患/インターセックスの体の状態)を持つ人々とご家族の実態,本当の想いについて,インタヴュー形式の調査を行い,まずは要約としてまとめた報告書を2017年に発表しました。要約と言っても,全73ページに渡る詳しい報告書になっています。


 調査を行ったのは,ベルギーの名門ゲント大学の臨床心理学者,Nina Callens博士。


 ゲント大学病院の性分化疾患専門医 Joz Motmans医学博士とChia Longman医学博士のスーパーバイズの元で行われています。

  ネクスDSDジャパンでは,この報告書を入手し,逐次翻訳を行い,ここでご紹介していきます。


 まずは表紙につづいて引用されている 詩人ロバート・フロストの一節からご紹介しましょう。


ずっとずっと昔:
森の中で道が二つに分かれていた。そして私は・・・
そして私は人があまり通っていない道を選んだ
そのためにどんなに大きな違いができたことか

Robert Frost 1874-1963

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海外国家機関DSDs調査報告書

ベルギー国家機関性分化疾患/インターセックス調査報告書
オランダ社会文化計画局「インターセックスの状態・性分化疾患と共に生きる」表紙

 近年、教育現場や地方・国レベルで、LGBTQ等性的マイノリティの人々についての啓発が行われるようになっています。その中で,DSDs:体の性の様々な発達(性分化疾患)が取り上げられるようになっていますが、昔の「男でも女でもない」という偏見誤解DSDについての知識が不十分なまま進められている現状があります。

 そんな中,人権施策や性教育先進国のオランダとベルギーの国家機関が,DSDsを持つ人々とご家族の皆さんの実態調査を行い報告書を出版しました。

 どちらもDSDsを持つ人々への綿密なインタビューや、世界中の患者団体、多くの調査研究からの情報などを総合し、誤解や偏見・無理解の多いDSDsについて、極めて客観的で当事者中心となった報告書になっています。世界でもこのような調査を行った国はこの2カ国だけで,どちらの報告とも,DSDsを持つ人々に対する「男でも女でもない」というイメージこそが偏見であることを指摘しています。

 ネクスDSDジャパンでは,この両報告書の日本語翻訳を行いました。

DSDs総合論考

 大変残念ながら,大学の先生方でもDSDsに対する「男でも女でもない」「グラデーション」などの誤解や偏見が大きい状況です。

 

 ですが,とてもありがたいことに,ジェンダー法学会の先生方にお声がけをいただき,『ジェンダー法研究7号』にDSDsについての論考を寄稿させていただきました(ヨヘイル著「DSDs:体の性の様々な発達(性分化疾患/インターセックス) 排除と見世物小屋の分裂」)。

 今回,信山社様と編集委員の先生方のご許可をいただき,この拙論をブログにアップさせていただきました。

 DSDsの医学的知見は大きく進展し,当事者の人々の実態も明らかになってきています。ぜひ大学の先生方も,DSDsと当事者の人々に対する知見のアップデートをお願いいたします。

 

 (当事者・家族の皆さんにはつらい記述があります)。

ジェンダー法研究:性分化疾患/インターセックス総合論考
ジェンダー法研究:性分化疾患/インターセックス総合論考
性分化疾患YouTubeサイト(インターセックス)
ネクスDSDジャパン:日本性分化疾患患者家族会連絡会
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